ビオセボンの店頭でもおなじみの「秋川牧園」がつくる循環型農業は、前編でご紹介した鶏に対してだけではありません。牛乳や牛肉・豚肉、野菜まで、秋川牧園でつくるものすべてにポリシーを持って、人の体によくておいしいものをつくっています。

一周してみて、「野菜づくりがかっこいい仕事だと思った」

ビオセボンの店頭に並んでいるだけでも、鶏肉や卵、牛乳にヨーグルトなど、さまざまな食材をつくり・加工する「秋川牧園」さん。

前編では、鶏が育てられている環境と、そこから出た鶏糞を肥料に加工して、その肥料を鶏たちのご飯になるお米づくりに使い、環境を無理なく循環させている様子をお届けしました。

秋川牧園さんの考え方って理想的ですが、お米を作って、安全なエサをあげて…というサイクルって、何年もかかる面倒な仕組みのはず。

どうしてそれを始めようと思ったのか?なぜ続けていられるのかを、野菜づくりの様子を見せてもらいながら、秋川牧園 生産部の村田さんに伺いました。

無農薬の露地栽培でつくる、背の高い風除けの植物に守られた野菜畑。キャベツ・ブロッコリーなどを中心に約50品目栽培しているのだそう

前回案内した、自給飼料を始めるときの水田にしている耕作放棄地の端の余った農地で野菜を作っています。タネから発芽し、苗にして植え付けるまでをすべて有機の土や肥料で行っています。

僕の父が農家で、子どもの頃から農家の苦労を見ていたんです。だから僕はきれいでかっこいい仕事をしてやろう!って思って住宅メーカーに就職したんですが、年を経て『きれいでかっこいい仕事ってなんだろう』と思った時、秋川に来て野菜づくりを始めていた(笑)。

村田さんと、つやつや、のびのびという言葉がピッタリな野菜たち。

だから、農家さんの苦労や手の届かない部分というのがよく分かるんです。僕は農家さんがもっと販売上手になればいいと思っている。そのために、ノウハウを提供したりより良いタネを売ろうと思ったんです。

時間がかかるし、一見お金にならないけれど、賛同・協力してくれる人が増えて、それが循環してひいては利益になっていったんです」

そういえば、前編から案内してくれていた松尾さんも、音響メーカーからの転職組。秋川牧園の考え方に共感してジョインするというスタッフさんはとても多いんだそうです。

動物が食べるものにまで気を遣うって、なかなか意識しないこと

次に松尾さんが案内してくれたのは、若いスタッフが運営している、秋川牧園グループ内の「むつみ牧場」

牛が育てられているむつみ牧場。ピンクの屋根や白い柵、ゆるやかなカーブの道のりがのんびりと気持ちいい!

到着前から、何やらバタバタとしているらしい!聞いてみたところ、なんと1時間ほど前に子牛が生まれたばかりなのだとか。

まだ、へその緒も付いたままの生まれたての子牛!生まれて1時間でこんな風にすくっと立つんですね
1日300kg食べるという牧草もなんと、50%以上を秋川牧園さんで作っているのだとか

ちょっと落ち着いたところで、牛舎を見せていただきました。エサは牧草のほか、nonGMOのとうもろこしと大豆をあげているそう。「お肉とか牛乳とか、直接口に入るものまでは気を遣っても、その素となる動物が何を食べているかまでは、なかなか思い至らないですよね」と松尾さん。確かに…。

飼料をスタッフの手嶋さんに見せてもらいました。これまでは輸入のみだったnonGMOのとうもろこしですが、今年から試験的に地元での生産が始まったとのこと

むつみ牧場では80頭の牛を飼っています。牛舎の敷料(地面に敷いたおがくずなどの用土)は頻繁に変えて清潔に保たれています。

「ここの牛舎はあまりアンモニア臭がしないでしょう?」と手嶋さん。確かに、牛舎にいても動物臭くなくて、牧草と牛乳の匂いがするんです。

「個人的には、アンモニア臭がすると牛がそれを吸い込んで牛乳の風味にも影響するような気がして…。そんなふうに、牛のためにしたことが、結果的にその恵みをいただく人間のためにもなっているんじゃないかなと思います」

手嶋さんも別の農場から秋川牧園に来た、30代半ばの若手。ここで会う人はみんな個性的で伸びやか! 秋川さんの考えに共感して集まっているんですね

「牛舎によっては、人間が近寄ると怖がって逃げていってしまうようなところもあるんですが、うちは牛が逃げていかないんです。むしろ、まるで犬みたいに突進してくる牛もいて、ちょっと困っています(笑)」と手嶋さん。本当に人懐こい牛も多くて驚きでした。

人の体は繊細だから、将来のためにリスクを減らした食をつくる

それにしても、秋川牧園では「サステナブル」とか「循環」という言葉を大切にしていますが、改めて、秋川ではなぜそれが大切にされて続けているのでしょうか?最後に、社長の秋川 正さんにお話を伺いました。

本社に戻って、秋川牧園 2代目社長の正さんにインタビュー。お話を伺った会議室には、食の安全に関しての本がたくさん!

「秋川牧園は、僕の祖父が戦前に中国でつくった農園がスタート地点。1970年代ごろは日本が高度成長経済で発展するなか、公害問題や農薬問題が日本各地で叫ばれましたよね。

そこで、僕の父である会長が、祖父に言われた「口に入れるものは間違ってはいけない」という言葉に立ち戻り、現在のようなスタイルになって再出発した会社なんです」

はじめは、いのちが凝縮されている卵から始めようと、無投薬の卵を作ることからスタートしたといいます。そして次は、同じ鶏の無投薬にチャレンジしよう、その次は生物濃縮を防ぐために無農薬・無化学肥料に挑戦して、21世紀からはnon-GMOに取り組み、2010年代からは飼料用米をつくろうとなったんだそう。

「40年前にはどれも「不可能なことだ」と言われていたけれど、地道に研究した結果、実現可能になっていきました。化学物質を避けるのも、考えた結果、人間は自然に対して謙虚であるべきという考えを持っているからなんです。

ここ100年ほどで、あらゆる化学的な農薬や食品添加物ができました。つまり、今の食べ物に含まれている農薬や食品添加物は、江戸時代にはなかったものだらけなんですね。

人の体のメカニズムは、気が遠くなるほど長い時間をかけて作られたもの。タフと言うより繊細なものではないかと考えています。だから、何が起きるかわからないものは少ないに越したことはないと考えています。今すぐ何が起きるわけではなくても、人間にも地球に対しても、より将来のリスクを減らしたいということですね」

「つくるだけでなく、おいしく食べてもらうまで責任を持ちたい」と、お肉をさばきパッケージにするところまで、すべてを秋川牧園で行っていました

健康的ないい暮らしを、食べる人だけでなく作る人もしなくてはならない

でも、生産・加工に集中せず、農家さんや生産者さんの支援までするのはなぜなのでしょうか?

「農業や畜産のように、自然が相手の現場は個人の良さが活きる場所だと思っています。個人で働いている人たちというのは、うまく行かなかったら自分の収入に関わってくる、真剣勝負の世界ですよね。

その反面、日本の農業や畜産は作っているものは良くっても個人がバラバラに生産していて、世界の大きな会社の加工や品質管理・販売・開発・競争力に及ばない。

そこを、会社である秋川牧園が支援して、ネットワークをつくり。『大きなチーム』の一員としてノウハウを共有しています。そうしたら消費者の方も嬉しいし、食べてもらうまでに一番いい形になると思っているんです。だからノウハウを共有することは、僕たちからしたら自然なことなんです」

そういえば、農家さんだけでなく社員さんたちものびのびと全力を出していましたよね。

約300人の社員さん。誰とすれ違っても気さくに挨拶をしてくれる、そんな風通しの良さが素敵でした

「協力し合うという意味では、会社と社員も『管理する・される』という関係では良くならないと思っています。だから、それぞれの考えを尊重することを大切にしています。

秋川って『ちょっと欲張りだ』って言われます(笑)でも、それぐらいがちょうどいいと思っています。豊かで健康的ないい暮らしを生産者もしなくてはいけないし、社員も消費者も一緒にその恩恵を受けなければいけない。

なるほど!なんだか、自分も秋川牧園さんで働いてみたくなるような考え方でした。

最後に、正さんが考えるこれからの目標を教えてもらいました。

「近ごろ、『輸入品でオーガニック』はよく見るようになったけれど、『国産オーガニック』ができたら、より良いと思いませんか?

一部の商品では国産オーガニックも出てきたけれど、あらゆる生産品でそれが叶ったら、すごくいいですよね。だから僕は『顔が見えるオーガニック』を目指したいと思っています」

すでに限りなく無添加でさまざまなものづくりをされている秋川さんのこだわりと、オーガニックが完全に結びついたら確かに、お肉も牛乳も、野菜も…あきらめたり、我慢しないおいしい食が叶ったらとても素敵なものになりそう!すっかり、秋川牧園さんのファンになってしまったスタッフでした。

おすすめアイテム

秋川牧園
秋川ヨーグルト(プレーン)
秋川牧園の牛乳でつくる、酸味が少なくなめらかな舌触りのヨーグルト。行きたまま腸に届くビフィズス菌BB-12配合。

※写真はイメージです。
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